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<古都>鎌倉案内~いかにして鎌倉は死都から古都になったか

ショッキングな題名に惹かれて、思わず手に取りました。

チャイルドロア(こども民俗学)を専門とする筆者は、鎌倉好きが高じて本書を書くに至った、と記載しています。鎌倉が現代の様相を呈するまでの歴史、さすが民俗学を生業とするだけことはあります。生活者視点で、且つ文献根拠にウェイトを置いた形の記述で、「現代人の抱く鎌倉イメージ」へ至る系譜が、通常は見落としがちな視点で丁寧に描写されているのが興味深いです。

特に、筆者のモチベーションが、「俺っちの好きな鎌倉、昔はどんなだったんだ?」という素朴な視点を根拠にしている為に、「鎌倉移住者」である私には共感できる記述がそこかしこに。

ところで、現在、鎌倉は「古都鎌倉」と形容され、奈良・京都と並ぶ<古都>と称されている。源頼朝が鎌倉に幕府を開いた事を考えれば、鎌倉はかつて武士の都であり、その意味で<古都>であることに誰も異存はあるまい。だが、同じ古都とはいってもそれおれの魅力は大きく異なっている。筆者の場合は、特に「落ち着きと深み」「静謐な閑けさ」「陰翳」、そして「懐かしさ」といった魅力を鎌倉に感じてきた。こうした言葉を鎌倉の魅力としてあげることは、おそらく鎌倉を愛する多くの人々に共通する思いであろう。

(中略)

実は筆者の場合、これらの魅力の根源を、多くの鎌倉についてのガイド本が説明するように中世の都だったことに求めることには釈然としないものを感じている。いや、それどころか、この段階であえて大胆に言い切ることをお許しいただくなら、これらの魅力は直接的には中世の都だったこととは異なるところに由来するのではないのかと考えている。

さびれた農村となっていた<死都>鎌倉が江戸末期~昭和初期に観光地化・別荘地化・そして高級住宅地化してゆく系譜がうまくまとめられていて新書サイズの文量が読んでいて心地良いです。そして、本書の真骨頂と言える記述は、以下でしょう。

鎌倉はその歴史性から獲得した仮想空間としての<古都>を演出し、鎌倉を訪れる人々は、<古都>というテーマを楽しむために鎌倉に足を運ぶ。(中略)それは、<古都>というテーマパーク、と表現できるのではないだろうか。外界から完全に遮断され、空間内にいると外界の景色を目にすることなく、外界を意識せずにすむことは、バーチャルな空間を作り上げることが求められるテーマパークという空間にとってはとても重要な要素である。周囲の山々に小さく穴を開けたトンネルや霧と押しを潜って外界からその空間内に入り込むことになる鎌倉は、この要素を完全に満たした稀有な町の一つなのである。同じ古都とはいえ、山の中に閉じ込められた印象のない奈良との決定的な違いがここにある。

民俗学的に言えば「結界」論、「貴種流離譚」が現代の鎌倉を構成する最大要素、という事でしょう。本書を読んで改めて考えさせられるのは、「世界遺産候補地」としての鎌倉ではなく、鎌倉=テーマパークをブランド化するにはどうやってアトラクションを配してゆくのか、という視点が重要なんでしょうね。

ちなみに本書、内容的には非常に興味深く読了したのですが、細かな点を言えば「○○だったのである」的な、(「事実発見!」的な表現)が多様されているのが気になりますが、これは著者の論文スタイルなんだろうな、と言う事で。

鎌倉移住を考えている方は、ぜひ一度お読みになる事をお薦めします。

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